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30年前のあの夏が蘇る!角松敏生「Breath From The Season 2018〜Tribute to TOKYO ENSEMBLE LAB〜」

立夏を過ぎ、気温の上下を体験しながら、心の中は70年代後半から盛り上がった「夏だ!海だ!」と言うキャッチフレーズが浮かんでくる今日この頃です。この「夏だ!海だ!」の後には、それに相応しい音楽を奏でるミュージシャンの名前がありました。皆さんも夏に相応しい自分の音楽をお持ちの事と思います。僕には「夏だ!海だ!角松だ!」なんです。並びは「夏に正月か?」と言う感じですが、そんな角松敏生が新しいアルバムを発表しましたので、今日は紹介します。大人の夏の必需品ですよ。(文中敬称略)


37年前、角松敏生との出会い

大衆的な物は大好きなのですが、どこか捻くれたい気持ちを隠せない自分には、70年代後半からの「夏・海」ブームの牽引者だった山下達郎や高中正義に変わる新しいミュージシャンを探していました。今のように情報に溢れていない時代でした。カーステレオ(イイネ!この響き)から流れる音楽に「この曲いいね!誰?」と同乗者に聴かれることが命だったんです。1981年、新宿の高層ビル街にあったレコード店の店頭に設置された試聴コーナーで、角松敏生のデビューアルバムと出会いました。
その前から、ハワイの「SEA WIND」と言うフュージョン系のグループを聴いていたのですが、「海風」の英訳には「SEA BREEZE』の方が良いなと思っていました。もちろん、今では日常的なあのローションは、まだ日本には入っていない頃です。
そこに、アルバムタイトルが「SEA BREEZE」とあったので、思わず試聴してしまった訳です。
第一印象は、当時多くいた山下達郎フォロワー的だけど、明るさが感じられました。
バックを「パラシュート」が担当していて、村上ポンタ修一や鈴木茂の名前もあったので、安心して聴けるなと自分のコレクションに加えました。
カーステレオの評価は、「この曲いいね!山下達郎じゃないよね?誰?」「角松敏生だよ」「え〜、そんな名前の人、いるんだ〜」と、「門松」が頭に浮かぶ人ばかりでしたが、しばらくすると自分の周りにはちょっとした角松敏生ブームが起きたのでした。
それから37年間、聴き続けています。

30年を経てビッグバンドアルバムをリメイク

2016年、角松敏生は活動35周年を記念してデビューアルバムをリテイクした「SEA BREEZE 2016」をリリースしました。35年前のマスターテープが発見されたと言うことで、リテイクしたのはボーカルだけで、オケは35年前のものをリミックスしたものでした。当時のミュージシャンの演奏に自分のボーカルが付いて行って無かった事へのリベンジを果たした訳です。

昨年は1987年発表の自身初のインストゥルメンタルアルバムを30年ぶりにリメイクした「SEA IS A LADY 2017」をリリース。1987年当時、ある種ノリで作成してしまった部分を、きちんと作り直したいとの想いでリメイクしたものでした。そして、日本ゴールドディスク大賞のインストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得しました。

そして、今年、1988年発表の数原晋率いるビッグバンド「TOKYO ENSEMBLE LAB」を角松敏生がプロデュースしたアルバム「Breath From The Season」をベースとして、自身のアルバムとして発表したのが今日紹介する「Breath From The Season 2018〜Tribute to TOKYO ENSEMBLE LAB〜」です。

角松敏生はいわゆるシティポップス系ですが、デビュー当時からダンスミュージックの要素も取り入れていて、フォーンセクションを大事にしていましたし、海外録音だったセカンドアルバムでは「Earth Wind & Fire」のフォーンセクションをレコーディングに参加させていました。とは言え、そこまではレコード会社主導のレコーディングだったようで、3枚目のアルバム「ON THE CITY SHORE」にて、初めてセルフプロデュースとなり、自らアレンジも担当しました。
この時から、トランペッターの数原晋さんがレコーディングに参加されるようになりました。

1984年の暮れ、僕が初めて行った角松敏生の渋谷公会堂に於けるライブに数原晋が参加されていて、その時のメンバー紹介が「今日、一番ギャラの高いミュージシャンです。」だったのをよく覚えています。まだまだタバコが全盛だった時代、マイルドセブンメンソールのCMBGMとして使われたアルバム「SEA IS A LADY」の「SEA LINE」の翌年、マイルドセブンFKのCNBGMとなったのが、角松敏生プロデュースによる「TOKYO ENSEMBLE LAB」の「LADY OCEAN」でした。

数原晋さんとのレコーディングから、ビッグバンドのレコーディングプロデュースを若い時代に経験していたということになります。
そして、30年を経て、自らのクレジットでビッグバンドをフューチャーしたアルバムを作成したのは、関西での活動にあったようです。

「Allow Jazz Orchestra」との出会いで角松の楽曲が生まれ変わる

関西のビッグバンド「Allow Jazz Orchestra」とのコラボコンサートがBillBoard Live Osakaで4年間開催されています。僕もこの2年、年度末の大阪出張に合わせて聴きに行きました。角松敏生の楽曲が、素敵にスイングアレンジされていて、16名のビッグバンドの奏でるブラスハーモニーと共にとても楽しめるひと時でした。その楽曲をレコード(記録)しておきたかったのだと思います。「TOKYO ENSEMBLE LAB」から30年、いよいよ気は熟したと言う事でしょう。

それは、「LADY OCEAN」のアレンジにも表れています。
1988年当時、角松はヤマハのリズムマシンRX11を大活用していました。そして、ビッグバンド用の曲でありながら、「踊れるビッグバンド」をコンセプトにリズムマシンによるダンス系の要素を取り入れたのです。この辺りは、「ジャズに対する敷居」を感じていた事の表れと、今回のライナーノーツに記されています。
そして、長く角松バンドにレギュラー参加している本田雅人のアレンジによる今回の「LADY OCEAN」はしっかりスイングしてます。
違った形で踊れるんじゃない?という出来です。

インストゥルメンタルの「Lady Ocean」に続き、「SHIBUYA」「I’LL CALL YOU」「RAINE MAN」までは、これまでの角松の歌曲を「Allow Jazz Orchestra」の宮哲之がBillBoardでのライブ用にブラスアレンジにしたものです。特に、「RAIN MAN」はBillBoardでのスタートの曲で、オリジナルはピアノ3台のアンサンブルでしたが、これを見事にフォーンアンサンブルされていて、オリジナルを崩すことなく歌う角松のボーカルラインとのマッチングは秀逸です。

そこから一転、「Have Some Fax」「Gazer」と、オリジナルのリズムをベースに本田雅人のブラスアレンジで聴かせてくれます。「Have Some Fax」 では、オリジナルのブッチャー浅野祥之のカッティングをサンプリングしていて、オールドな角松フリークを喜ばせてくれてます。

そして、再び「Can”t You See」「AIRPORT LADY」と宮哲之のブラスアレンジでBillBoardでのライブアレンジになります。「Can”t You See」のオリジナルは1988年、アンビシャスラバーズがプロデュースとアレンジを担当、角松と共にルーサー・バンドロスファンなら思わずニヤッとするイントロ等、30年を経た今聴いても古びれない完成度の高い一作です。今回は2005年にアンプラグでリテイクしたスローなバージョンをベースにブラスアレンジを合わせて、よりアーバンナイトな雰囲気になっています。「Allow Jazz Orchestra」 のバンマス宗清洋のトロンボーンソロも聴きどころです。オーバー80の宗清洋のソロを聞くと、アラ還なんてまだまだ鼻垂れと言われている気がします。懐かしい「AIRPORT LADY」 でリズムを上げた後に続くのが、1988年の「Breath From The Season」 にも収録されていた「Nica’s Dream」。ファンキージャズの代表的アーティスト ホレス・シルヴァーの名曲を再録しました。2018年バージョンは角松フリークには懐かしい吉沢梨絵とのデュエットで収録されています。途中からは各パートがソロを取るのですが、二人のスキャットの掛け合いも聴きものです。1977年デビューの吉沢梨絵の、劇団四季への参加などを経た上での成長は嬉しいものがありますね。

まるでライブを聴くような構成の今回のアルバムは、いよいよ「TAKE YOU TO THE SKY HIGHT」を迎えます。 ライブでもアンコールの定番、紙飛行機が乱舞する「TAKE YOU TO THE SKY HIGHT」 は今回はかなりアレンジが変更されていますし、歌い方も大幅に変わっています。オリジナルも数原晋のブラスアレンジが心地よいのですが、今回は更にラテンジャズ色を高めて、新たなこの曲の魅力を伝えてくれます。
そして、本田雅人のブラスアレンジをのせたカバー曲「A Night in New York」。多くの人が耳にしたことがある懐かしい曲を、見事に蘇らせてくれました。

そして、最後の曲は「Breath From The Season」にも収録された「 Morning After Lady」。原曲はE.W.&F.かと思うほどの重厚なホーンセクションのイントロから始まる、角松らしいメロディアスなバラードですが、今回はシンプルに小林信吾のピアノだけ。しかし、間奏であの数原晋がフリューゲルホーンを聴かせてくれる。
30年前の「Breath From The Season」の参加アーティストで今回も参加しているのは、ギターの梶原純くらいだ。後、角松バンドのメンバーでは友成好宏。まだ、浅野祥之も小林信吾も本田雅人も参加していない、そんな時だったのだ。このアルバムの最後に、「TOKYO ENSEMBLE LAB」のバンマス数原晋が吹いてくれた事により、聴き手の自分も30年の月日の大団円を迎える事ができました。

昨年のジャズ部門のトップセールスCDは、松田聖子さんのアルバムを出されました。大江千里さんも、今はすっかりジャズです。年齢を重ねて到達する域として、ジャズはあるのかもしれません。

その想いを、ビッグバンドとのコラボで表現した事は、角松敏生のらしさの表れと思います。聴き続けてきた人はもちろん、昔聴いていた人も、これから聴く人も、この夏のBGMにお薦めです。iPhoneから車に流したら、同乗者から「この曲いいね!誰?」と聞かれる事請け合いです。

BillBoard Live Osakaでの「Allow Jazz Orchestra」とのライブの模様をベースとした「SHIBUYA」のPVで、アルバムとライブの雰囲気を感じてください。

17名の大所帯によるツアーがスタート

そして、このアルバム発売とともに、5月20日よりツアーがスタートします。

「LADY OCEAN」をライブで僕が聴いたのはただの一度、1988年9月、今は無くなった野外ステージ「よみうりランドイースト」で行われた、「SPECIAL ONE SHOT NIGHT T’s Bar」に於いてだけです。多分、角松敏生のライブで演奏されたのは、その時だけだったのではないかと思います。
この時は、「SEA WIND」のホーンセクションで、世界的にセッションをこなしてきたJerry HeyとLarry Williamsが参加していて、「SEA WIND」を聴いていた僕としてはそれだけでも有難いものでした。
さらに、数原晋さんや小池修さんなど「TOKYO ENSEMBLE LAB」のメンバーとのフォーンセクションは素晴らしかったです。
この時は、「SEA LINE」と「LADY OCEAN」をメドレーにして演奏してくれたのですが、もう既にスイングアレンジの「SEA LINE」もあるので、メドレーを再現してくれるかどうか、楽しみなところです。

また、「Allow Jazz Orchestra」とのライブで演奏されながらアルバムには収録されていない曲もあります。そして、元々、フォーンセクションが全面にアレンジされた曲も多数あります。ジャズアレンジだけでなく、ダンス系・AOR系・バラードなどの曲もビッグバンドと共に聴けるかもしれません。

楽しみが募るライブです。
お近くでライブがあるようでしたら、是非聴いてみてください。

デジタルなこの世の中で、アナログの圧倒的な素晴らしさを、プレーヤー総勢17名と言う人手をかけて伝えてくれる事と思います。
それこそが、ビッグバンドとやる事で、角松敏生が伝えたい事なのだろうなと感じています。

TOSHIKI KADOMATSU Performance 2018 BREATH from THE SEASON

5/20(日) 大阪 オリックス劇場 開演17:30
5/22(火) 名古屋 日本特殊陶業市民会館 開演18:30
5/26(土) 仙台 トークネットホール(大ホール)  開演17:30
6/1(金) 福岡 福岡市民会館 開演18:30
6/9(土) 大宮 大宮ソニックシティ 開演17:30
6/16(土) 広島 広島NTTクレドホール 開演17:30
6/17(日) 岡山 岡山市立市民文化ホール 開演17:30
6/22(金) 長野 レザンホール(塩尻市文化会館) 開演18:30
6/23(土) 沼津 沼津市民文化センター 大ホール 開演17:30
6/29(金) 東京 中野サンプラザ 開演18:30
6/30(土) 東京 中野サンプラザ 開演16:30

ライブに関する詳細はこちらから

角松敏生のアルバムはこちらから

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