アジアカップ準々決勝、日本代表対ベトナム代表は、僕の想定を遥かに上回ってベトナムの守備組織が固く苦戦を強いられた日本ですが、後半堂安律のPKによるゴールで1-0の辛勝、なんとか準決勝に進出しました。準決勝は中国3-0で破ったイランとの戦いとなります。
悲喜交々なVAR判定
この試合の重要な要素に、ロシアワールドカップでも話題になったVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の存在がありました。アジアカップでは準々決勝からの採用となり、この試合が初めてVARを使う試合となりました。
前半23分、この試合初めて柴崎岳から縦のフィードを北川航也がキープした時に、原口元気・南野拓実・堂安律の3人が前向きに北川を追い越していく、良い形ができました。原口にスルーパスが出て、南野へのラストパスはカットされたものの、コーナーキックを得ました。ここで甦るのは、サウジアラビア戦です。
柴崎のコーナーキックはまたも山なりにゴールマウスを横切り、中央で吉田麻也がヘディングで押し込みました。
しかし、ベトナムのキックオフが始まろうとする時に、あの四角を書くジェスチャーがあり、ハンドの判定でゴールは無効となりました。
もちろん、抗議のあるなしでVARを行うわけではありませんが、特にベトナムから抗議があったわけでもなく普通に再開されようとしていましたし、ゴールシーンのスローを見ても気付かなかったのですが、VARは神の手も見逃さないのですね。
そして、後半8分、原口からパスを受けた堂安がペナルティエリアの中にドリブルで切り込むと、ベトナムの選手に倒されますが、プレーはそのまま進行します。試合中良くあるシーンと言う感じで、「あのくらいでは取られないかな?」と思っていたのですが、約1分半後にVAR判定のサインが出されました。そして得たPKを堂安が決めて、日本は貴重な先制ゴールをものにしました。
吉田のゴールが認められていたら、堂安のPKのシーンは生まれなかったと思いますが、準々決勝以前であれば、吉田のゴールは1点で、堂安のPKは無かったと言うジャッジで試合が流れても、何の違和感もなかったでしょう。サッカーにはレフェリーのジャッジがおかしい事もあります。ただ、それは長い目で見れば、「行って来い」の世界だと僕は思っています。印象としては悪い方が残りますが、同じくらい得した事もあるのです。そのような人間臭さもゲームの一部だと思うのですが、皆さんはどう思われますか?
その辺をうまく取り入れてるのがテニスですね。ジャッジに3回失敗するまでチャレンジできると言うシステム、それが試合を演出しています。あれだけ出来るテクノロジーがあるのなら、全部ビデオでジャッジして審判に伝える事は容易だろうと思うのですが、そこはやはり人間がやるから面白いのだと思います。
例えば、全豪オープンの女子準決勝、大坂なおみマッチポイントのサービスが、センターに打ち込まれます。決まったと喜ぶ大坂の絵にセンターラインのジャッジがごめんねと言う表情でフォルトのジャスチャーをします。すかさずチャレンジをする大坂が、ラケット越しに手を合わせる中、会場にビデオが流れ、数センチラインに掛かった部分が拡大されて映し出されました。再び歓喜の大坂、テクノロジーも加わった何とも素敵な幕切れの演出になったなと思いました。
それに引き換え、サッカーのVARは試合が切れるまで判定が行われません。
ワールドカップでも指摘がありましたが、堂安が倒された後、あのままベトナムがゴールしても、試合はVAR判定時に引き戻されるので、1-0でリードしたたのが一気にPKを与えたピンチになるのです。ゴールで無くとも、退場に値するファールで交代せざるを得ない負傷を負ったらどうなるのでしょう?しかし、VARで指摘されても判定が変わらなければ、逆にその後のゴールは認められる事になります。この辺りの運用は難しいですが、VAR判定が出そうになったら、機を見て試合を止めるなどの試行錯誤も必要ですね。
そして、今回のケースでは、VAR判定に入る前のベトナムが行なった交代は無効にならなくてはならず、交代でアウトした選手を戻してPKをやらなくてはいけなかったと思います。PKが止められ、その流れで交代した選手がゴールしたら、一体どうしていたのかなと思います。
日本国内でも、ルヴァンカップで採用されるとのことですので、この辺りは日本らしく改善を伴って進めて欲しいし、世界を導くテクノロジーを開発して欲しいと思います。
勝負に行くのか?経験の場なのか?
試合経過的に見ると、前半は守備を固めてよく走るベトナムの中で、10番のグエン・コン・フォンのスピードと個人技に悩まされました。
このグエン・コン・フォンは2016年にJ2の水戸ホーリーホックに期限付き移籍をして5試合に出場した経験のある選手です。
その後の成長もあるでしょうが、海外組がJ2で控えの選手にあれだけやられるのは、あまり見たくないシーンでした。
後半は日本もしっかりボールを保持して戦ったので、前半の様には攻められる感じはなくなりました。試合全体のボール支配率は日本が69%と大きく上回りましたが、前半の戦い方は良くなかったと思います。ディフェンスと権田修一のボール回しのコンビネーションが悪くなる時があります。鳥栖の時の存在感が感じられないのが残念です。
南野も相変わらず不調から抜けきれないですね。今思うと、オマーン戦の原口のPKを、南野に蹴らせて得点させておいたら良かったかなと思いますが、これはタラレバですね。サッカーの試合で不運や失敗が重なり上手く行かない選手に、「Not his day」と言う表現をするそうですが、「Not his tournament」にならないと良いのですが。
後半、ベトナムがディフェンスラインを5人から4人に変えたあたりで、ショートカウンターから1点を取って試合を決めて欲しかったのですが、最後まで1点を追うベトナムのモチベーションが切れない試合になってしまいました。
そんな後半ですが、大迫勇也が試合に戻ってこれた事は大きかったです。しかし、ここで疑問に思うのは、なぜ大迫タイプの選手が他に選出されていないのか?と言う事です。
例えば、浦和の興梠慎三がいれば、トップの起点は充分に果たせたでしょう。
アジアカップを奪還するすると言う事に対し、選手選考で総力を挙げているかには少し疑問を感じます。やはり、経験の場となるのでしょうか?
チーム経験値の高いイランとの戦い 個の経験値で強かさを見せろ!
準決勝はイランとの対戦になります。
現在のFIFAランクでイランは29位、日本は50位です。カタールのワールドカップから参加国が48カ国になるとの話もありますが、現行の36カ国で見ると、アジアで唯一FIFAランクでワールドカップに出場圏内にいるのがイランです。48カ国だと41位のオーストラリアが入りますが、それでも日本は圏外です。
中国との試合を見ましたが、イランはチームが出来上がっていてかなり強いですね。
それもそのはずで、イランのカルロス・ケイロス監督は8年もイランを率いています。この大会で勇退するそうですが、アジアカップまで契約を伸ばし、ワールドカップを戦ったメンバーを中心にして臨んできた成果がしっかりと見えます。
中国のリッピ監督も今大会後に中国を去る様ですが、3年目となります。
アジアカップで、カルロス・ケイロス監督とリッピ監督が戦うと言うのも、ちょっとした感慨がありますね。
準々決勝で敗れた韓国とオーストラリアはワールドカップ後に監督が交代しましたが、勝ったカタールとUAEはワールドカップ予選敗退後に監督交代、監督として1年先行していました。
ワールドカップの半年後に行われるアジアカップ、今後は日本も監督との契約期間をアジアカップまで伸ばすことを検討しても良いのではと思います。
長谷部誠も本田圭佑もワールドカップで代表引退を宣言するのは、一つの大きな節目かもしれませんが、今後代表を退くのはアジアカップまで伸ばしても良いのではと思います。
この様に、チームとしての経験値ははるかに高いイランですが、日本はサウジアラビア戦の様に、ヨーロッパでの個の経験値を生かして戦えば、充分に対抗できると思います。厳しい試合をまた1-0で勝ち抜く強かさを見せて欲しいですね。
ここで後押しになるのは、バルセロナでプレーし元スペイン代表、現在はカタールのアル・サッドでプレーするシャビのアジアカップ予想です。
ここまで、ベスト16で13カ国、ベスト8で7カ国、ベスト4で3カ国を的中しています。
その決勝予測は日本対カタール、そう、高的中率のシャビの予測では日本がイランに勝つと出ています。優勝はカタールですが、カタールでプレーしている現在、外す訳にもいかないでしょうから、決勝は眉唾でしょう。
勝負をかけながら経験値を高めるとした日本代表ですが、最大の経験値は最大の試合数をこなすことです。そのためにも、イラン戦、しびれる試合で勝ち抜くことを期待します。
そして、今日は全豪オープン女子シングルスの決勝です。
ランクは上の大坂ですが、ランク通りの戦いでグランドスラム2連勝の偉業を期待したいですね。
大坂なおみ、そして日本代表を応援しましょう!