アジアカップ2019、最近はノックアウトステージと言うらしいですが、決勝トーナメントの一回戦、日本代表対サウジアラビア戦が21日夜行われました。 立ち上がりから押し込まれていた日本は、柴崎岳のコーナーキックから冨安健洋のヘディングシュートでゴールを挙げ、それが決勝点となり1-0で準々決勝に進みました。 内容的には押され続けた試合でしたが、勝ち進むという結果は残した試合となりました。
吉田麻也が見せた顔面ブロック
このところ、ボールの保持を高めるサッカー、いわゆるポゼッションサッカーを志向しているサウジアラビアですが、日本は同じくボール保持を高めて戦うのではなく、守備をきちんと整えボールを保持されても攻め込ませない戦い方をしました。そして、ボールを奪ったらカウンターの速攻でゴールを狙います。
その為、立ち上がりから押し込まれた流れになりました。
日本が作る守備ブロックの外側でボールを回してくれている時は安全ですが、サウジアラビアも早い時間に先制点を取って試合を優位に進めようと日本を崩してきます。
12分、日本の左サイドのゴールライン際で原口元気が入れ替わられクロスボールを供給。長友佑都がヘディングでクリアするも小さく、そのボールをアルシビが強力なボレーシュート。しかし、ゴール前を固める吉田麻也がシュートコースに入り顔面でブロックしました。吉田は最後までボールに集中しボールを見ていたと思います。予期している状態で当たった時は、脳震盪など起こす事は少ないと思います。さすがの吉田も一瞬倒れましたが、すぐ気合十分に復帰しました。
この最後までボールを見ると言う事は、ディフェンダーには大切な事です。
それを身を以て示したこの吉田麻也のプレーが、最終的に76.3%もサウジアラビアにボール保持されてもゴールを許さなかった守備の集中につながったと思います。
記録を見ても、サウジアラビアは15本のシュートがありましたが、ゴールの枠の中に来たのは1本だけ、6本のシュートがブロックされました。
狙い通りだった日本の先制点
防戦一方だった日本が活路を見出したのは19分、右サイドから大きく左サイドのスペースに出されたボールを受けた原口元気、お得意のカットインからのシュートかと思いきや、縦にドリブルをしセンタリングを選択、これによりコーナーキックを得ます。
これは原口に聞かなければわかりませんが、もしかしたら、自分がシュートして入れば良いが、ここはコーナーキックを取って一度全体を上げようと狙ったのかもしれません。一昔前は、堂安律も大人しく思えるくらいヤンチャだった原口が、こんな大人のプレーをしちゃうんだと一人うなづいていると、そのコーナーキックがゴールを生みました。
サウジアラビアは中東の国でフィジカルが強いと言うイメージを持っていますが、意外にも今回のチームは大きな選手がいません。コーナーキックやフリーキックはカウンター以上にチャンスです。普
段は屈強なベルギーでプレーをしている冨安健洋ですが、ここでは頭一つとは言えませんが、おでこくらいは上に出ます。前に入るフェイントをかけて後ろに下がるとフリーなスペースができました。そこに柴崎岳が山なりのボールをキック。二人のあうんのスペース共有は、練習の賜物でしょう。最初のコーナーキックで狙い通りの、正にセットプレーでの素晴らしいゴールでした。
先制点が産んだ試合展開
先制点が取れた事で、試合展開はより鮮明になりました。
攻める、或いは攻めさせられる、サウジアラビアと、守り、或いは攻めさせておいて、カウンターを狙う日本。後半に入り、前半から両サイドのケアをしていたミッドフィールダーの原口と堂安がはっきりと守備的に下がり、その事はさらに明確になりました。
結果、終始押されている試合内容でしたが、主導権を握っていたのはあくまでも日本だったのではないかと思います。
課題を挙げるとすれば、カウンターで2点目を上げられなかったことでしょうか?
原口と堂安が下がったので、攻撃は南野拓実と武藤嘉紀の二人に託されましたが、この二人共が前に行きたがってしまいました。どちらかがボールを貯める動きができれば、もう少し良い展開が生まれたかもしれません。
サウジアラビアの仕掛けが右サイド、日本の左サイドに多くなってきた為、後半31分に森保監督は南野に変えて伊東純也を右サイドに投入します。堂安を中に入れて貯めを作る狙いもあったと思います。ゴールには結びつきませんでしたが、この狙いは機能したと思います。
そして、後半43分に堂安に代えて塩谷司を投入し、残り時間、1点を守り切ると言うメッセージを送ります。
最後は脚が攣った武藤に代えて北川航也を入れロスタイムの時間稼ぎも出来、3人の交代枠を使い切った森保監督の交代カードの使い方も良かったと思います。
4分の3を相手にボールを保持されても、ゴールマウスに飛んだシュートは1本、セットプレーで得点して逃げ切る、サウジアラビアの拙攻もあったかもしれませんが、日本のプラン通りの試合だったと思います。
海外組が占めたフィールド
この試合の先発は、ゴールキーパーの権田修一だけがJリーグのサガン鳥栖所属で、フィールドのプレーヤー10人は、ヨーロッパでプレーする選手でした。奥寺康彦さんがケルンに行くとなって大騒ぎになった時代を知る者としては、こう言う時代になったんだなぁと言う感慨もあります。
一方的にボールを支配される試合展開になっても、ミッションをしっかりこなす選手たちの逞しさは、本場で揉まれて形成されていているものだと思います。
ただ、開始当初の権田の足元の不安定さは気になります。
2009年に日本代表に選出され、2012年には4位となったロンドンオリンピックでも正GKとして活躍しながらも、2015年にオーバーとレーニング症候群になり復帰に苦しんでいたようでした。2017年からサガン鳥栖に所属し、かつてのパフォーマンスを取り戻し、ゴール前での存在感も示せていると感じていましたが、このアジアカップではやや不安定にも見えます。
権田の復帰は喜ばしかっただけに、奮起を期待したです。
油断は禁物のベトナム戦
このところ、東南アジアサッカーの復興は目覚ましいものがあります。
タイは2位でグループリーグを勝ち抜き、3位で進出したベトナムはPK戦でヨルダンを破り準々決勝に駒を進め日本と対戦します。
今でこそ、東アジアと中東と言うアジアのサッカー強豪国図式ですが、1970年代は東南アジアも一勢力でした。当時は組織的な東アジア、身体的な中東、そして個人技の東南アジアと言うのが大まかなサッカースタイルでした。
ミュンヘン五輪の予選ではマレーシアに、ロサンゼルス五輪の予選ではタイに、それぞれ初戦で叩かれて敗退させられていました。
ベトナムと言えば思い出すのが1967年のメキシコ五輪予選です。
日本に6カ国が集まりリーグ戦を行なったセントラル方式の予選は、3-3の壮絶な引き分けとなった日韓戦を受け、日韓が3勝1敗で並び、得失点差が日本が21、韓国が7でした。日本の最終戦はベトナム、韓国は日本が15−0で勝ったフィリピンです。しかし、この試合、フィリピンは11人全員でゴールを固め韓国は5点しか取れませんでした。一説には、韓国が「18点取る」と豪語したのに反発して守りを固めたと言われています。勝てば良い日本でしたが、硬くなったのかなかなかゴールをこじ開けられず、後半、肩を脱臼したまま出場した杉山隆一さんが、ドリブルで切り込みゴールキーパーともつれ込むようにして足先で突いたシュートで得点。
その1点を守り抜いて、メキシコ五輪出場を決めました。
実際、大会ではベトナムは日韓に次いで3位でした。
ちなみに、このベトナムとは当時の南ベトナムです。
報道では新興ベトナムと書かれていますが、僕的には充分古豪です。
プチターンオーバーできるのではと言うことも言われていますが、舐めたら痛い目を見ると思います。「勝って当たり前」が「勝たなくてはならない」となった時に苦戦する事は、52年前にも起こっているのです。
僕が心配してもきっちりとやっていることとは思いますが、万全の準備で気の緩みなく戦うことを願います。
とは言え、できれば今大会初の2点差以上の試合で、ゆっくりと試合を見たいものです。
21日は、大坂なおみが逆転勝ち、錦織圭は大大逆転勝ち、日本代表が厳しい試合を勝ち抜くと日本3連勝でした。
今日はオーストラリアオープンが一足先に準々決勝、ジョコビッチは強敵ですが、また錦織・大坂・日本代表と、準決勝へそろい踏みしたいですね。
頑張れ!錦織圭!頑張れ!大坂なおみ!
そして、アジアカップを闘う日本代表を応援しましょう!