子供の頃、ラーメンのスープと言えば鶏がらだった。
鶏がらのスープに醤油を加えればラーメン、塩味はタンメンと分かりやすかった。
炒めた野菜の中にスープを加えたタンメンは、鶏がらと野菜のスープになり、ラーメンとは違った味を出していた。
それくらいのスープの違いは、子供ながらもわかった。
そのラーメンに、みそ味が加わった時は衝撃だった。
カレーラーメンの様な変化球や、坦々麺ブームなどもあったが、味噌ラーメンほどの衝撃はなかった。
その後は、スープの味と言うより、スープ出汁の進化が特徴となる。
豚骨スープが登場した。
濃厚な豚骨スープは背脂とともに変化していった。
そして、魚介系の出汁を加えるスープが出てきた。
新宿の麺屋武蔵は、サンマ節で人気店になった。(最近、店名が、麺屋武蔵新宿総本店から創始麺屋武蔵に変わったそうだ。)
さまざまな出汁によるスープが出回る中で、久しぶりに驚いたのが今日紹介する新宿の「麺屋海神」のスープだ。
魚のあらを使ったスープ
「麺屋海神」のスープの特徴は、各種の魚のあらからとっていると言うことだ。
浜料理の中に、あら汁がある。
魚のあらを使った出汁で作るみそ汁だが、それを思い浮かべた。
お店に入ると、「本日のあら」が張り出されている。
4種類のあらから取ったスープという事だ。
あらを火で炙った上で炊き上げ、特製の塩だれと合わせる。
魚介だけのスープと言うのも珍しい。
しかも、仕入れによりあらの種類が変わるので、スープの味は微妙に変わる。
特に、季節による変化は大きいのかもしれない。
麺も、2種類の小麦粉のブレンドし、炭で浄化した水で練り上げた特製麺だ。
「あら炊き塩らぁめん へしこ焼きおにぎり付き」を注文した。
芸術性すら感じる一杯
出てきたラーメンのスープは、黄金色に透き通っている。
きれいに並んだ細麺の上には、白髪ねぎ・みょうが・針しょうが・大葉と糸唐辛子。
そして、鱈のすり身に海老を練り込んだつみれと、細かく砕いた軟骨をちりばめた鳥つくねが乗っている。
色合いも含めて、芸術性を感じる。
鯖の糠漬け「へしこ」を混ぜた焼きおにぎり「へしこ焼きおにぎり」が付いている。
ラーメンを楽しみ、雑炊も楽しむ
1口すすると、そのさっぱりした味わいに複雑なこくを感じる。
日本に生まれ育った者にとって、魚のあらのスープを美味しく感じないわけはない。
しかし、どこか豪快さを感じるあら汁の感じからすると、あまりに繊細だ。
細麺だがしっかりと歯応えのある麺との調和も程よい。
軟骨がコリっとくる食感を楽しめるつくねと、海老の味が鱈とともに口に広がるつみれも絶品だ。
これだけでも、十分に満喫できたのだが、お楽しみはもう一つある。
最後に、残ったスープに「へしこ焼きおにぎり」を入れて、雑炊に仕立てるのだ。
へしこがスープに溶けて、香ばしい焼きおにぎりと合わさる味わいは、絶品だ。
焼きおにぎりとともに、久しぶりに完食した。
作りあげられた潮仕立て
文章を綴りながら「潮仕立て」と言う言葉を思い出した。
カツオ節を使わずに魚介のみで仕立てる吸いもの。
この潮仕立てのラーメンは、鶏や豚ベースのスープのラーメン、特に先週紹介した二郎系の対極にある。
しかし、ここまで作り上げられていると、ジロリアンも十分に楽しめる一杯だと思う。
途中で試しにと胡椒を少しだけふったのだが、これは失敗だった。
そう、潮仕立てに胡椒はふらない。
「麺屋海神」のスープはそのまま楽しむのが良さそうだ。
ジャンル:ラーメン
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3-35-7 さんらくビル 2F(地図)
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情報掲載日:2020年9月23日