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鈴木茂さん・小原礼さん・林立夫さん・松任谷正隆さんの四人のレジェンド達が「SKYE」と言うアルバムをリリースされたので、ご紹介します。
すごいレジェンドが再集結
みなさん、鈴木茂さん・小原礼さん・林立夫さん・松任谷正隆さんをご存知ですか?
松任谷正隆さんはユーミンこと松任谷由実さんのご主人として、鈴木茂さんはあの「はっぴいえんど」のギタリストでソロでも活躍されいたので、ご存知の方も多いと思います。
小原礼さんと林立夫さんは、ベースとドラムなのでちょっとマニアックかもですね。
この4人、今年度で古希を迎える同学年で、小原礼さんと林立夫さんは青山学院中等部・高等部の同級生です。
そんな4人がアルバムを発表したのですが、結成は高校時代に遡ります。
高校時代のバンド「スカイ」
小原礼さんと林立夫さんは同じ学校でバンドを組んだりしていたそうですが、高等部に上がり、今は廃校になってしまいましたが、ギターが上手いと有名だった都立玉川高校の鈴木茂さんと3人で「スカイ」と言うバンドを結成しました。
もちろん、アマチュアバンドです。
その時、それ以前はギターを担当していた小原礼さんは鈴木茂さんのギターの上手さから、ベースに転向したそうです。
2018年のNHK紅白歌合戦で、ユーミンのバックミュージシャンに鈴木茂さん・小原礼さん・林立夫さん・松任谷正隆さんが入り、胸躍ったのを記憶しています。
その翌年、「佐野史郎 meets SKYE with 松任谷正隆」と言う形で、佐野史郎さんの6曲入りのミニアルバムを発表しました。
高校時代のアマチュアバンドが、「SKYE」の名義をプロとして世にお披露目したわけです。
いろいろな場面で重なり合っていた活動
高校生のアマチュアバンド「スカイ」は、1968年に結成、翌年、鈴木茂さんが「はっぴいえんど」に誘われたことにより消滅します。
1971年、吉田拓郎さんのアルバム「人間なんて」のバックミュージシャンとして松任谷正隆さんはプロの道を歩み出し、ヒット曲「結婚しようよ」では、加藤和彦さん・小原礼さん・林立夫さんと共に松任谷正隆さんがオルガンとバンジョーで参加しています。
その小原礼さんは、1972年に加藤和彦さん率いるサディスティック・ミカ・バンドに参加します。
1973年には林立夫さんと鈴木茂さん・松任谷正隆さんは、細野晴臣さんとティン・パン・アレイを結成、ユーミンのアルバムに参加したり、オリジナルのアルバムもリリースしました。
歌謡曲に代わる新しい日本のロック・ポップスの創世記に、この4人がしっかりと足跡を残してきた事は確かです。
日本の音楽史に残るレジェンドミュージシャン
バンドを組むかどうかは別として、その後4人は様々なアーティストのバックミュージシャンとして活躍されてきました。
4人のことを知らなくとも、「結婚しようよ」とか「ひこうき雲」などを通じて、4人の音に触れていたことと思います。
例えば、鈴木茂さんのウィキペディアでは、途中から主な演奏参加作品という欄がありますが、様々なジャンルの錚々たるアーティストたちの名前と作品が並んでいます。
松任谷正隆さんがアレンジで参加したアーティストも多く並んでいます。
小原礼さん・林立夫さんは参加歴まで記されていませんが、同じように多く楽曲に参加されているのは間違いありませんし、1970年〜80年代の多くのアルバムに、お二人の名前がクレジットされています。
音楽は産業の一つであり、脈々と作られた仕組みがあったことは、NHKの朝ドラ「エール」で描かれていました。
日本のロックの原点とも言えるロカビリーやグループサウンズも、70年安保に反対する反体制の象徴となったフォークソングも、歌謡曲の仕組みに飲み込まれていきました。
そんな1970年代、高度成長で広がる豊かさの中、日本の大衆音楽に新しい潮流を生み出し、逆に歌謡曲もそこに融合していった音楽の担い手の中に、この4人がいたことは間違いありません。
ご本人達は、ただ楽しんで出来るだけ好きな様に演奏していただけかもしれませんが、音楽が本来持つ楽しみを表現することで、商業的にも成り立つことを確立しつつ、黄金の1980年代を迎える礎になったのではないかと思います。
心地よい時間の流れるアルバム
そんな4人が結成というか再結成というか、古希を迎える2021年にSKYEとしてのアルバムをリリースしました。
古希でアルバムデビューできるのは、この4人だからこそです。
音の間に流れる空気感
このアルバムをリリースした4人に対し、映画監督の堤幸彦さんのインタビューがYoutubeにアップロードされています。(SKYEのYouTubeチャンネルはこちら)
その最初で、松任谷正隆さんは「若い頃は自分を8割投影したい、投影しなくては意味がないと思っていたが、今は2割の力で8割が投影できるのがわかって楽になった」、小原礼さんは「余計なことを考えなくなったので、力が抜けているけど、別のエネルギーが出てきた」、鈴木茂さんは「いろいろな視点から見ることができるようになっている」、林立夫さんは「これしか出来ないので、これしかやらないと思うと、等身大でできる」とそれぞれ語られています。
林立夫さんは続けて、「等身大の自分のものを出し合って、そのシンプルな演奏が掛け算になっている」と言われましたが、まさにその通りに、タイトでもスローでもそのリズムの間に流れる空気感がたまりません。
4人が楽しんで音を奏でているのが、その音を通じて感じられます。
攻め込んでくるメッセージ
この4人がバンドを組んだ時、ボーカルはやはり鈴木茂さんかなと思いましたが、4人がそれぞれリードボーカルを担当して、それぞれの味を出しています。
針を落とすと(実際は▶︎ボタンを押すのですが)ドラム→ベース→ギターと重なりながらロックのリズムを刻み、エレピの導入と共に「♬やらなくたっていい 言わなくたっていい 迷ったっていい それからさ」と共に小原礼さんのボーカルで「Less is More」のメッセージが飛び込んできます。
そしてロックンロールな「Dear M」、ブギな「ISOLATIN」と続きます。
「ISOLATIN」は今の世を歌った曲ですが、「♬ ISOLATIN」の後に「ウ〜〜ゲロオナ」とコーラスが入ります。
このコーラスには、ユーミンと尾崎亜美さんの奥様達も参加されているそうです。
そして8分を超える鈴木茂さんの「ちぎれ雲」は、「はっぴいえんど」の未発表曲です。
スローロックだった曲をバラードに変更されたそうですが、なんとも言えない世界観の一曲です。
「♬そよそよ そよ風」と「風」もしっかり歌詞に入っているのが、当時の松本隆さんらしいです。
当初、オリジナルの歌詞が残っておらず作詞の松本隆さんの詩集から引用しようと鈴木茂さんが相談したところ、「はっぴいえんどの曲は神聖なので、いじらないで欲しい」と言われオリジナルに戻したため、ランニングタイムも8分になったそうです。
間奏ではしっかり泣ける茂節も聴けます。
「ROCK’N PIANO BOOGIE」は本来こう言う曲で構成されるのかなと思うインストの曲です。
4人の実力を改めて認識できる一曲です。
「Always」はバンジョーでスタートする曲ですが、「結婚しようよ」のバンジョーが松任谷正隆さんと思って聴くと、また味わい深くなります。
ラストの「BLUE ANGELS」、シニアには泣ける一曲です。
情緒的な鈴木茂さんのスライドギターの間奏、そしてエンディングのキーボードが心を揺さぶります。
息の合ったレジェンド達の力の抜けた音に心地よく酔いながら、ときおり攻め込んでくるメッセージにハッと自分を振り返ったりしながら、心地よい時間が流れていきます。
ベテランアーティスト達の今を聴きたい
このアルバムを聴いて次に掛けたくなったのが、Bread & Butterの岩沢幸矢さんの「マストの日時計」です。(「マストの日時計」を僕が紹介したページはこちら)
2017年、74歳の時のオリジナルアルバムです。
2020年にはBread & Butter50周年ライブが、このSKYEをバックに行われました。
音楽兄貴達が元気なのは嬉しいことです。
2020年12月に、松任谷由実さんもニューアルバム「深海の街」を発表されました。
ただ、どうしてもベテランになってくると、新譜に出逢えなくなります。
創作意欲が衰えてくるのは、仕方ないことかもしれませんし、セールス的にも厳しいものかもしれません。
また、CDを出すことそのものも、今の音楽業界事情に合わないのかもしれません。
しかし、本来の「レコード」の意味する「記録」として、ぜひ同年代の今を作品として、残して欲しいなと思います。
シニア世代はもとより、若い方にもぜひこの「SKYE」を聴いていただきたいです。
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